佐々木先生は現地での調査を綿密に行っている。立命館大学探検部の顧問をしておられた先生は台湾の蘭嶼とフィリッピンバタン島の文化の類似性に着目し、1970年3月から3ヶ月にわたって10名の探検部員とともにバタン島の調査をした。調査項目は農業とその経営方式、漁業とその労働形態、集落住居の諸特質、社会組織とその編成原理、宗教と儀礼の問題である。かなり文化人類学的要素の多い学術探検隊であった。バタンの農業は森林植生を失った土地に展開される「焼き払い」草やブッシュそして少し太めの木などは根元に刈り草を置いて燃やすことが行われていて、昔森林があった時代には焼畑が行われていたであろうと推測される。佐々木高明はこのような現象を焼畑耕作が消滅してゆく過程にしばしば見られる衰退型と捉えている。この島で栽培される作物は熱帯地域に発達した「根菜型農業」とし、食用になる作物は30種以上で中でも主要な作物は「さつまいも・トウモロコシ・ヤムイモ」であるが生産量が多いサツマイモは家畜の飼料としても用いられているがヤムイモは飼料として用いられずもっぱら食用として用いられる主要な作物である。その植え付けに際しては豚や鶏の供犠を伴う農耕儀礼が現存することを確かめている。
右 耕作に用いる堀棒 以上 「バタンの自然と文化」より
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